朝のスラム街

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彼の名前はマイケル・マッケン。



父ショーン、母クリスタルの間に産まれた一人息子である。



ショーンは中古車ディーラーを経営しており、その影響からか、マイケルも幼少の頃から車好きであった。



6歳の時に母クリスタルを亡くし、それ以降はショーンとマイケル、父子の二人暮しである。

そのせいかどうかは知らないが、見事に、そして順調にマイケルは不良少年へと育っていった。



学校では喧嘩に明け暮れ問題ばかり。

タバコ、酒は12歳で覚えた。



ただ、この不良少年マイケル。

喧嘩は滅法弱く、タバコを吸えば必ず噎せ、酒など一滴でも飲もうものなら天地が逆転する程に泥酔する。



そんなだから回りからは「ヘタレのマイケル」と呼ばれ、手下、と言えばまだ聞こえはよく、要はパシリで、何かと便利に使われていた。



不良からだけでは無く、普通の生徒からも下に見られ、それにカッとなり喧嘩を吹っかけるも、逆に返り討ちにあってしまう。

女の子に負けた時などは「もう死んでしまおう。」と思ったほどであった。



走れば必ずこける。

料理は、インスタントラーメンでさえ失敗する。

洗濯すれば、何故か服が破れる。



まさに「駄目」を地で行くマイケル少年であった。



ある日、ちょっとした事からリンチにあい、



もはやこれまで!



という状況になり、少年ながら死を覚悟した、その時!



ササッと疾風のように現れて、相手をバッタバッタと薙ぎ倒す、謎の少年......。



その少年こそ当時15歳のビックであった。



「この人に一生付いていこう!」



マイケルはこの時そう決意した。





実際、ビックといるといじめられる事は無かった。

ビックはマイケルに喧嘩の仕方(弱いの変わらなかったが)、様々な遊びを教えた。



マイケルはビック兄の様に慕い、ビックもマイケルを実の弟のように可愛がった。

両方共に兄弟がいなかったからかもしれない。



そんな、ある日であった。



ビックが突然「牧師になる。」と言い出した。



マイケルは反発した。



「何で牧師なんかになるんだよアニキ!」



「.........」



「何でだよ!?いつもみたいにさ、仲間と馬鹿騒ぎしてさ、悪党やっつけてさ、いいじゃん!それで!クールに行こうぜ!」



「.........」



「なぁ、アニキったら!」



「.........」



「......あぁ、わかったよ。もういいよ。何にも言わねぇよ。クソ牧師でも羊飼いでもなりやがれってんだ!なんだよいきなり......訳わかんねぇよ!テメェはそれでいいさ。俺は違うぞ!今まで通り毎日クールにキメてやっからよ。いいか、金輪際テメェと俺とは何の関係もねぇ!クソ牧師なんかと兄弟なんて、真っ平ごめんだぜ!」



「......兄弟じゃないがな。」



「うるせぇ!もういい。もういい!今日、今、ここから、完全に赤の他人だからな!いいんだな!?」



「.........」



「本当に行っちまうからな!」



「.........」



「後で泣き付いても知らねぇぞ!」



「.........」



「クソビッーチ!」



本心ではなかったものの、言った手前引くに引けなかった。





ビックと袂をわかった後の生活は、荒れに荒れた。



盗み、恐喝、暴行...どれも成功した試しはないが、心は荒みに荒みきっていた。



そんなマイケルを心配したショーンは、警察学校に入る事を薦めた。



もちろんのこと、マイケルは猛反発したが、父親の必死の説得に改心し、警察学校へ入学を果たす。





しかし!



入学から二年後、ちょっとした口論から喧嘩(もちろん返り討ち)をしてしまい、除籍処分を言い渡されてしまう。



これには流石のショーンも呆れ果て、スラムに帰ってきたマイケルに「もはや親子ではない!」と言い放つ。

要は、勘当されてしまったのだ。



「ちくしょう...何で俺だけこんな目に...。」



昼は工事現場で働いた。

夜は、街の真ん中にある廃ビルを根城とし、クールとは真逆の生活を送っていた。



そんな生活が半年ほど続いた、ある日。

その男は現れた。



そう、地獄牧師である。



地獄牧師を見たマイケルは瞬時にこう思った。



クール...クールだぜ!

これだ!俺が追い求めていたのはこれだ!

これが本当のクールだぜぃ!



マイケルは早速、黒のロングジャケット、黒のサングラス、銀色の十字架を購入。

日本刀の代わりに拾ってきた鉄パイプ、マシンガンの代わりに家から拝借してきた猟銃。

地獄牧師の髪型は坊主だが、マイケルは自分の髪型にプライドがあるらしく、金髪のリーゼントのままであった。



それらの地獄牧師セットを身につけ、鏡に映る自分を見て一言。



「オォゥ...クールだぜ!」



だが、衣装が全て安物のためか、イマイチ決まっていない。



「ギャング団が出たぞ!」



と聞くと瞬時に着替え、愛車のカブに跨がり現場へ直行するのだが、着いた時には大体が終わった後か、騒動の途中に着いたとしても物影に隠れ



「今日は...やめとこう。

何故なら腹が痛いからだ。

万全の状態だったら、あんなチンピラ共なんぞ鼻糞をほじくるかの如くやっつけられるが、体調が悪い時にほじくると血が出たりするからな。

今回は地獄牧師に託そう。

次こそは地獄牧師と、このクールなMr.マイケルの究極コラボでギャング団を一網打尽だぜ。」



と、そのヘタレ振りを遺憾無く発揮していた。



一度、意を決して飛び出ていった事があるが、自警団のリーダー、ナッシュに



「邪魔だ!どけ!」



と怒鳴られ蹴られた事があり、それ以降は戦闘に全く参加していない。



マイケル本人はバレてないと思っているらしく、

「俺そっくりの人間が地獄牧師のまね事をしてる?いやぁ俺は知らねぇなぁ。いや、本当に。ただよ、俺が思うにそいつは......最高にクールだな。」

と、通り切らないしらを切っていた。

そんな彼を回りの住民達は

「あまりにも哀れだ...。」

と、何とも言い難い目で見ていた。



そんな日々が続いた、ある日。

根城にしている廃ビルで、拾ってきたソファーに寝転びウトウトしていると、普段はしないはずの人の気配が、する。



ま、まさか幽霊!?



恐る恐る気配がする方へ行くと、うっすら月明かりに照らされて、微かに確認出来る程度ではあったが、男二人組が何かゴソゴソと動いている。



しばらくすると二人は去っていった。



何を...してたんだ?



二人組がいた方へ近付くとそこには、デジタル表示のタイマー、赤と青のコードが出ている箱、その箱の後ろには、巨大なドクロマークと「DANGER」と書かれた、明らかに火薬が入っているであろうと思われる大きめの箱が大量に積まれていた。



オォゥ......ファック!



これが冒頭の事の顛末である。



















ズダダダダダ!



ドアを開けたマイケルを待っていたのは、温かい朝陽や小鳥の囀りではなかった。

3人のギャングと、3丁のマシンガンがマイケルの体を打ち抜いた。



一瞬マイケルは、蝶のように舞ったかと思うと、膝からガクッと崩れ、ドッと地面に突っ伏した。



何だい......こりゃあ......。



何が起こったのか理解出来ず、必死に立ち上がろうとするも、思うように体が言うことをきかない。

目の前が、霞む。



駄目押し。

とばかりにギャングがマシンガンを構える。



と、そこに!



ゴウッ



どこから現れたのか、いつの間にかギャングの目の前には地獄牧師が、いた。



えっ!



と、ギャングが感じた瞬間、地獄牧師は持っていた日本刀を横一文字に薙ぎ払った。



ピュッ!



数秒おいて、ギャングの首がズズッと横にズレ、頭が三ついっぺんに地面へ落ちた。



プシャーッ!



血が、まるで噴水のように吹き出し、辺り一面を真っ赤に染め上げた。













「大丈夫か!?」



もはや、呼吸すらもままならない状態。

目も霞んできた。



だが、マイケルはその目で、はっきりと見た。

自分の目の前に、憧れの地獄牧師が、いる。



「へ......へへ...ほ...ほん...本物の...じ、じ...地獄...牧師だ......うれし...いなぁ」



「もう喋るなマイケル、もういい!」



マイケルはうっすらと笑みを浮かべた。



「あ...あ...俺...の名...前......を、しっ......てるの...かい...う、れし...なぁ......きょ...おは、...じ、人生...で、さ...いこう...の日...だ...」



「もういいから、もうすぐ救急車が来るから、死ぬな!」



「そ、そい...そいつぁ...む...り...な、はな...し......だよ.........俺...にだ...てわか、る...さ...ハハッ...」



「マイケル!」



地獄牧師、いや、ビックは我慢しきれなかった。

なぜマイケルが死ななければならないのか?

何故!



ビックはサングラスを外し、叫んだ。



「いいか、希望を捨てるな!生きろ!お前は...」



マイケルの顔が一瞬驚いた表情になったが、すぐにまた笑みを浮かべた。



「アニキ......地獄......牧師...ったんだね......カッコ...イイ...」



「マイケル!」



「.........」



「マイケル!!」



「.........」



「マイケール!!」



「...............」





.....................





マイケル・マッケン

享年21歳





スラム街の朝陽は、二人を温かく包みこんでいた。



「アーーメーーン!」



ビックの叫びは、鳥の囀りと共に、朝のスラム街に響き渡った。




このブログ記事について

このページは、scottが2008年3月26日 11:37に書いたブログ記事です。

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